Panasonic 液晶テレビ TH-L32R1(2009年製)が、2019年6月に突然画面が真っ暗になり映像だけが映らなくなりました。

(症状)
 TVや録画再生時の音声はちゃんと出ています。映像だけが出ない。リモコンは働いています。

(故障の原因)
 運よく同じテレビが手に入りました。両方のテレビの基板を比較しながら詳しく調べることができました。TCON基板の電子フューズが1個壊れていました。それだけでした。

(経過)
2020年5月4日現在、修理後正常に動作しています。あとは再び暑い夏を越えられるかどうかです。
2020年8月17日現在、正常に動作しています。連日の酷暑ですが、エアコンで29℃以下にしています。このあとの暑い夏に耐えられるかです。
2020年10月19日現在、正常に動作しています。今年8月の酷暑に耐えました。
2021年01月07日現在、正常に動作しています。
2021年03月24日現在、正常に動作しています。
2021年06月21日現在、正常に動作しています。
2021年10月03日現在、正常に動作しています。二度目の夏を乗り越えました。
2022年03月06日現在、丸2年経過問題なく正常に動作しています。
2023年05月16日現在、3年半経過問題なく正常に動作しています。

修理完了後の2台
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 左:貰い物A(正常)  右:今回の修理完了品B

以下は修理までの手順です


(作業)
1. 故障の原因を探るためBの裏を開けると約10年間の埃が溜まっていました。埃を全て丁寧に掃いました。
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2. 内蔵HDDのSATAケーブルが酷く劣化しており樹脂が剥落していますが、録画再生は支障ありません。
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3. 再度電源投入しても、エラーを示す赤い電源ランプ点滅は見られません。音声は出ています。
4. 液晶のバックライトは明るく点灯しています。

(故障個所の特定)
1. 裏から見て、左の茶色い電源基板の何ヵ所かのDC電圧を測定しましたが特に異常はありませんでした。
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 電源基板の裏

2. DC出力側の電解コンデンサを手持ちのものに何ヶ所か交換してみましたが、特に変化はありませんでした。
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3. 左右の基板の数か所の温度を赤外線温度計で測定したところ、かなりの温度上昇がみられました。
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 室温から30℃程度の温度上昇 ICを触っていられない。

 結局去年の6月時点では故障個所を特定できなかった。この頃は電源基板の電解コンデンサの容量抜けだろうと思っていました。


 2020年1月14日、近所の電気屋さんで、同じTH-L32R1(以下A)が捨てられているのを発見。事情を話して無料で譲ってもらいました。どなたかのTVの買い替えで回収したものです。

(Aの作業)
1. Aの埃を掃いました。
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2.Aの電源投入すると映像・音声ともに正常でした。Aは故障していません。
3. Aの温度測定
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 A 室温より30℃程度上昇しています。
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 Aの電源基板の温度測定

(2台の比較)
1. A・B2台を左右に並べました。
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 左:貰い物A(正常)  右:今回の修理品B

2. 電源基板から右の緑のメイン基板をつなぐコネクタ5ピンの電圧を測定しました。A・B同じ電圧でした。
3. 中央上部の金属カバー内にTCONがあります。TCONは液晶パネルに映像信号を送るタイミングコントローラーです。
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(TCONの調査)
1. 故障しているBのTCONのICは発熱が全くなく冷たいままでした。
2. 正常なAのTCONはICを含めて主に基板の右側が発熱していました。
3. BのTCONが働いていないか、電源が来ていないかのどちらかです。
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 A・BのTCONを本体シャーシーから取り外しました。

4. 正常なAのTCONを故障しているBに取り付けると映像がでました。
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 Bの映像出ました。BのTCONの故障と判明しました。

(壊れたBのTCONの調査)
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1. メイン基板から来るフラットケーブルの右端51ピンには2枚とも12Vが出ています。
2. TCONの電源が12Vと判りました。F1なる黒いチップの上側は12Vです。チップの下側で、Aは12V、Bは0.数Vでした。
3. F1チップには162NCCという表示があり、調べるとこれは電子フューズ(ポリフューズ)といって繰り返し使えるリセッタブルフューズ1.6A用でした。
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4.162 NCCを取り外してテスターで検査すると全く導通がありません。電子フューズが壊れたと結論付けしました。
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5. ガラスフューズ1Aを代替品として使う
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   黒線:GND 赤線:12V 白線:基板側VCC

6. F1に代えて、ガラスフューズ1Aを入れると162mA流れました。基板はほんのり発熱しています。しばらく放置したが、電流は安定していました。
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 フューズ付きのTCONをBのシャーシーに取付け、電流を測定しています。

7.  画面に映る映像の変化によって、TCONの電流は0.35A~0.40Aに変化しています。TCON基板の発熱は正常なものとかわりません。
8. 約2時間、このままの状態で録画されたビデオを再生し続けましたが、Bに異常は見られませんでした。

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 ガラスフューズをカプトンテープで絶縁し、BのTCONの金属カバーに貼り付けています。
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 A・B2台の裏側
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 A・B2台が正常動作するか確認しています。

(今後の課題)
1. どうしてF1電子フューズが壊れたのか。
2. 今後再びフューズが切れるか。
3. 熱い夏を乗り越えられるか。
 室温が高くなる夏季に再びフューズが切れるかも知れない。

(考えられるフューズ切断の原因)
1. 埃または発熱によるTCON基板の熱暴走による過大電流。
2. 12V電源ラインの異常による過大電流。
3. 電子フューズ自身の劣化。


(おまけ)
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